「触れただけで治せるわけじゃないのよ」
そう言いながら私は力を流し込んで傷を
塞いでいく。
前に治せなかった、内側の方の傷を。
それが終わって、私が手を話すと、
「すごいな、体軽くなった」
と、貼り付けたような笑みでこちらを向く。
…どうしてこの人は、こんな笑顔しか…
そう思っていると、フェルナンは踵を返して
私が投げ渡した巾着を振り回しながら
「あんただけなら、ちょっと近づかれてもいいかもって思えたよ。」
と、およそフェルナンが放つ言葉とは思えない
ような素直な言葉が飛んでくる。
「ありがと」
そう巾着を掲げて少しだけ振り返ったその顔は
作り笑顔じゃない、本当の笑顔が浮かんでいる
気がした。
…この一瞬で…なんの感情の変化が…?
理由のわからないフェルナンの行動に、
私は?を浮かべながら村の方へと戻っていった

