「シオン様?」 私がそう聞くと、エーラは片手で桶を持って、 片手で男の子の手を引く。 「そ、前に剣の稽古つけてもらった時、吹っ飛ばされた」 「わぁ」 シオン様も線が細くて、しかも色白で、 見るからに力無さそうなのに… エーラも剣での戦闘は得意だから、そのエーラ を吹っ飛ばすなんて相当だ。 …そういえば、あの日もシオン様は 夜遅く一人で剣の稽古していたっけ。 あの日から、シオン様の後ろに麒麟様の影が 張り付いて消えない。 …あぁ、もう。 重ねないと決めたのに。