温泉についた私は、温泉の側に生える木の


根元を見て驚く。






そこには、長い白い前髪に隠れて表情は


見えないものの、上半身裸で、真っ赤な布を


腹に右手で力なく抑えながら、


左腕はだらんと垂れ下がり血の気がなくなった


フェルナンが木に寄りかかっていた。




「…!!」



私は急いで駆け寄ると、脈があるか確かめよう


として、左手を掴んだ。




すると、フェルナンはビクッと驚いたように


左手を引き、バっと顔を上げた。







「…な…なに…って…何であんたここにいるの」



驚いてこちらを見るフェルナンに、私は


敵かもしれないにも関わらず、ものすごく


ホッとした。






「死んじゃってるのかと思って…」



私がそう正直に言うと、フェルナンは




「勝手に殺すなよ」


と言いながらそっぽを向いた。





「ていうか、近寄るなって言ったよね。あんた脳みそないの?」




そんな風にフェルナンは毒を吐くけれど、


前みたいに勢いはなかった。




それもそのはず、遠目から見た赤い布は、


元は白い布だったようだ。





辺りには血の匂いが漂っている。




「…手、退けて」


私はフェルナンの毒舌を無視して、腹を


見ながらそう言う。





「…なんで。傷口えぐり取る気?」


そう真っ青な顔で言いながら、身を引く


フェルナンに、ため息をつく。





…自分が大怪我を負ってる時でも、なんで


そんな呑気な挑発のような事をしてくるのか…