「…じゃあ、こんな山奥の村に国の役人が何のようなんですか」
そうライアが聞くと、
「あー、これこれ」
と、フェルナンは気の抜けるような声で、
そう言いながら、懐から1枚の書類を取り出した
…なに…?
そう思いながら、書類の文を読んでいくと…
「…この村に…用水路を作る…?」
ライアがそう目を見貼りながら言う。
「そういうこと。現王のご命令でねー」
とフェルナンはあからさまに面倒そうに言う。
「…面倒なら帰るか?フェルナン」
と、今度はフェルナンが出てきた茂みから、
薄い茶色の髪をした男が出てきた。
「…どれだけでてくるんですか…」
と、ライアも呆れてきていたが、
それをよそに、私は驚きでポカンとして
しまった。
…シオン様にそっくりな顔つき…
背丈も同じぐらい…?
違うところと言ったら、髪の色ぐらい…
もしかして…この人は…
「あれ、グオン様お早い到着ですね」
「早くて悪かったな」
…やっぱりそうだった…!
現王、グオン。
「…王様が、こんなところに来て大丈夫なんですか?」
私がそう聞くと、現王はこちらに目を向けて、
「なにがだ」
と言う。
な…なにがってそれは、安全面とか
内務が遅れたりとか…色々あるだろうに…
「王が各地を回らず、どうやって国の状態を把握するつもりだ。この村に、用水路を作り、出来上がった後半年間、税を免除する。」
キビキビとそう言いながら、現王はライアに
近づくと、書類を押し付けた。
「…なにか不満はあるか?」
「…い…いえ…」
突然の王の登場に、ライアはすごく動揺して
いたが、受け取った資料を見ると、少し
ホッとしたように笑った。

