ライアに薬草を教える約束をした後、
温泉について、
「俺は開けたところで待ってますから」
と、ライアは言ってその場を去ろうとする。
その後ろ姿に、私は
「うん、ありがとう」
と言うと、ライアが見えなくなってから
服を脱いで、体を拭くための布を持って
温泉に向かった。
その温泉は、一見川のように見えるのに、
水はとても温かかった。
私ははぁーと至福のため息をついて、
こんなにくつろいだのはいつぶりだろう…
なんて考える。
しっかりと肩まで浸かり、体の芯まで
ぽかぽかしてきた頃、パキッという枝が
折れる音がして、私は布を手にしてバッと
振り返った。
するとそこには、こちらに近づいてこようと
する、黒い鎧を着た役人の姿があった。
「あぁ、ばっか気づかれちまったじゃねぇか」
と、近くの木の影にももう一人役人がいた
らしく、そう言いながら影から出てきた。
「…」
私は無言で即座に体に布を巻くと、念の為
温泉の淵に置いておいた弓矢を取って
思い切り弓の弦を引いた。

