ゼンはそう言いながら、悲しそうな


それでいて、スッキリしたような顔で笑った。


「…ゼン…」




そうそっと呼びかけると、ゼンは



「さて…リズリにも怒られちまったしな。また…麒麟に付き合ってやるか!」



と言って、首を左右にブンブンと降る。



まるで、何かを吹っ切るように。






「よく言った!」


そんな声が後ろから聞こえて、私もゼンも


驚いて振り返った。





「…リズリ…盗み聞きか?趣味悪いぞ」



「悪かったですね!あんたがさっさと決めないからですぞ」


女将さんは、腰に手を当てて、ゼンを見上げる






「はいはい。じゃあ、もうちょっと待ってろよ、リズリ」



そうゼンが言うと、女将さんは頷いた。





「いくらでも待ってやりますぞ。今度こそ、麒麟様を守り抜いてこい!」



そう言った女将さんの笑顔はとても眩しかった






「…その笑顔だよ…」



ゼンはつぶやくようにいうと、窓越しに


月の出ている夜空を見上げた。