「まぁ…そんな訳で…ってうお!?」



私の顔を見てゼンが驚いたように声を上げる。


それもそのはず、私は目からこぼれる


涙を止められずにいた。






「…おい何泣いてんだ、ちびイーリア」


「…フィアネ…です…」


やっとのことで訂正しながら涙を拭う。





その場で殺されたと言っていたイーリアさんと


ジリーさんの死に、どれほどゼンは辛い思い


をしたのか…




それに、封印されている間、ドラグさんと


麒麟様であるファルダ様と女将さんの安否も


心配だったはず…





「…辛かったんだね…」


「うるせぇよ」




「…ゼン…」


私がゼンの名を呼ぶと、あ?と言いながらゼン


が振り返る。






「私は、麒麟様に会っている。麒麟様が死ぬ直前まで、側にいたの」


私がそういうと、ゼンは驚いたように


立ち上がる。





「なっ…!?本当か!?」


そのゼンの言葉に頷く。





「麒麟様は、覚えていたよ。あなた達のことを。そして、自分があなた達を忘れてしまっていた時期のことも。何度も、謝っていたのを覚えてるもの」



そう…麒麟様と、私がまだ小さかった頃


私は南の祠まで麒麟様と旅をしたのだ。




『…すまなかった…白虎、朱雀、青龍、玄武』



千年以上も昔に聞いた言葉なのに、


今、その言葉が、口調が、鮮明に思い出された






「…思い出していたのか…?麒麟は…」


ゼンのその言葉に頷くと、





「…何がどうなって思い出したのかは知らないが…それだけで十分だ…。麒麟があいつらの事を思い出してくれたなら、あいつらも…きっと安らかに眠れる」