「…ゼン、ここを登るのか?」 森を越えたあと、麒麟は驚いた顔で崖を 見上げた。 「いや、ここは急すぎて無理だから、横の階段のようになってる所から行くんだよ」 俺はそう麒麟に教わったことを麒麟に教える という奇妙な体験をした。 「そんな所があるのか!」 とニコニコしながら言う麒麟に、 落胆する気持ちが抑えきれずため息をつく。 …祠を見たら、元に戻るかもしれない。 そんな淡い期待を抱きながら、俺は麒麟を 引き連れて、崖の上まで登っていった。