女将さんのその言葉に黙り込むゼン。
「女将、私は麒麟の生まれ変わりであって、麒麟本人ではないよ。無理につき従わせるつもりは無いし…」
そこまでシオン様が言った時、
「黙っときなさい」
と女将さんが鋭い声でシオン様に言う。
「あたしが好きだったのは、麒麟様に誠心誠意尽くしていた白虎様だったよ。白虎様としての誇りも忘れてしまうのなら、恋なんて気持ちはいらないね!」
その女将さんの言葉にゼンも少しカチンと
きたのか、口を開く。
「俺はお前を1000年以上も待たせた。これ以上待たせたくない。一緒に静かなところで…」
その言葉を遮るように、女将さんは
「言ったはずですぞ、あたしゃ待つのに慣れたのです。あんたがまだあたしと暮らしたいと思ってくれてるとわかっただけで十分!あと数千年ぐらいは軽く待ってやりますぞ。」
女将さんは優しい笑顔で笑ってそう言った。
「あんたのことを麒麟様が必要としてくれてるんだ。行って差し上げなさい。あたしことは気にせずに」
微笑みながらそう言う女将さんの表情が、
なぜだか少女のように見えた。