「この老いぼれは待つことに慣れてしまいましたぞ」
と女将さんが言い放つと、ゼンは
「悪い悪い」
とそんなに悪びれずに言った。
二人の本当に嬉しそうな笑顔に、
シオン様もエーラも私も暖かい気持ちになった
それと同時に、ゼンは白虎として麒麟である
シオン様に仕えることはなさそうだとも思った
ずっと離れ離れだったのだから、二人で
積もる話もあるだろう…
そう判断した私たちは、勝手に使わせて
もらっている部屋へと入った。
「よかったな、ゼンの封印を解いて、女将と再会させてあげられて」
シオン様が満足そうに笑って言った。
私も同意して頷くけれど、エーラは不満そうな
顔をしていた。
「どうしたの?エーラ?」
と、私が聞くと、エーラは
「…あいつ、シオン様に助けてもらったのに礼の一言もない」
とムスッとしながら言う。
エーラ、言い争いもしていたし、ゼンと
相性が悪いのかも…
ゼンはシオン様に敬語とか使わないし、
エーラは多分その辺が気にくわないのだろう。
「エーラ、自分にはどんな嫌な態度とられても怒らないのにね」
確か、犬みたいだ、とか言われていたのに
それに関しては、エーラは全然怒ってなさそう
だった。
「別に俺は腰巾着だとか犬だとか、言われ慣れてるから平気だよ。でも、シオン様には敬意をはらうべきだ」
と顔をしかめてエーラは言った。

