辺りが少しずつ明るくなってきた時、
私はエーラに向かって言った。
「エーラ、少し休もう」
エーラの足どりはおぼつかなくなっていて、
自分で止血していたとはいえ、肩に巻かれた布
は、赤く染まっていた。
「ここでは…少し開けすぎてますし、あっちの木の根元までは行きませんか?」
明らかに顔色が悪いエーラが、私に向かって
そう言う。
「あぁ」
私はそう答えながら、エーラに近づき
肩を貸す。
「だ…大丈夫ですよ、シオン様…」
「いいから」
私はそう言いながら歩き出す。
本当は、あんなに深く短刀が刺さり、
出血も酷いのに、こんなに長い時間
歩かせたくなどなかった…
シオンは後悔の念に苛まれながら、
木の根元に着くと、そっとエーラを座らせた。
そして、エーラの肩に手を伸ばすと、
エーラは、
「自分でできます、シオン様はお休み下さい」
と、頑固に言った。
「私はもう、エーラの主人ではないよ。」
と、微笑みながらいうと、エーラは
「縁を切るというのですか?」
と、寂しそうにいう。
「え、いや、そんなつもりじゃない!」
私はエーラのことを友と思っていても
エーラは私のことを主人としか思っていない。
今なら…本当の友になれるだろうか。
そう思いながら私は、
「私は、エーラのことをただの従者だと思ったことはないよ。ずっと、友だと思っていた。だからこれからは、友として私のそばに居てくれないか?」
少し照れくさくて、ちょっと下を向きながら
そう言うけれど、エーラは無言のままで、
私は不安になって、顔を上げた。

