その言葉を聞いた女将さんは、
「あんたはどこまでも麒麟様に似ておられるわ」
と少し寂しそうに笑った。
私もそう思う。
麒麟様は、自分を犠牲にしてでも他人を守る
という人だった。
…だから、先立ってしまったのだ。
あの人は。
どんどん暗くなっていく思考を振り払おうと
首を横に振る。
「フィアネ?」
隣にいたエーラは、私の顔を見ると心配そうに
私の名前を呼んだ。
「なに?」
「…大丈夫か?」
「平気よ?」
私はそう答えて笑った。
エーラは本当に細かい表情の変化に気づくのが
早い。
今は、心配させてる場合じゃないのに…
しっかりしなくちゃ!
私はそう思い直す。
「早速だが、行こうか。崖を登るのなら明るいほうがいい」
と、シオン様が言う。

