オフィスのくすり

 普通にしていれば、可愛い顔をしていると思うのに、何故かホラー映画で惨殺された人さながらの表情でそこに写っている。

「何がしたいんだ……。

 誰かがこの女の写真を送ってるのか?

 何かの殺害現場とか?」

「こっち見てない? この人。

 生きてるわよ、きっと」

 井上は、そうか、と呟いたあとで、

「で?
 ついでに訊くが。

 何がしたいんだ? あれは?」
という言葉とともに、FAXを見たまま、壁の向こうを指差す。

 顔を上げると、少し茶色がかった髪の男が逃げる瞬間が見えた。

「あれは、お前の部下じゃないのか?
 和泉(いずみ)とかいうーー」

「元部下よ。
 彼は部署変わったの。

 ちょっといろいろあってね」

「いろいろって?」

「暇なの? 井上くん。
 私とちょっといろいろあって、部署変わらされたのよ」

「そういや、お前が新入社員に手を出してるって話を聞いたな。

 あいつだったのか」

「……もっと美しい言い方は出来ないかしら。

 ちょっと付き合いらしきものがあったのよ。
 結婚前にね。

 ほんとにちょっと」