《留学のために一度は離れたけど、やっぱり綾くんより好きになる人なんていない。
だから、私、イギリスに綾くんを連れて行くために帰ってきたの》
「え……?」
《今さっき、綾くんにイギリス留学の話をしたわ。
前向きに検討してくれるって、そう言ってくれた》
そ、そんな……。
綾世が……イギリスに行っちゃうの……?
《だから、綾くんと別れて》
─── それからどう返したのか、分からない。
多分、何も言えなかったんだと思う。
今はただ、誰もいないマンションのエントランスで、ツーツーツー…と携帯から響く冷たい機械音が、耳に届くだけ ─── 。


