中学2年に進級する時に、クラスが別れてしまったのだ。

しかも、教室は端と端。


ただそれだけのことだったのに、それは決して小さなことではなかった。


新しいクラスでは、お互いに新しい友達ができた。

それゆえ、最初こそわざわざ一番遠い教室まで真理に会いに行っていたケイだったが、次第に足を運ぶことが減っていった。



ケイもケイで、新しいクラスで好きな人ができて、それも要因のひとつだったように思う。



仕方がなかったといえば、そうなのだろうけど。

今となっては悔やまれることばかりだ。


どうしてあの時、と、考えてしまえばキリがない。


春の初めに真理が「よっちゃんと両思いになれた」と嬉しそうに言っていた。

覚えている限り、それがケイが見た最後の真理の、心の底からの笑顔だった。




『よっちゃんと両思いになれた』ことがきっかけで、真理は自分のクラスの女の子たちからいじめを受けていたらしい。

しかし、そんなことは、一番遠いクラスにいたケイの耳にまでは届かなかった。


真理をいじめていた女の子たちのやり方は狡猾で、無視から始まり、先生の目の届かないところを狙って嫌がらせをしたりしていたらしく、だから余計、ケイも気付かなかったのだ。


たまに、移動教室などの時に真理と会うことはあったが、元気がなさそうだなというくらいにしか思えなかった。

その頃のケイは、真理に会うと、いつも自分のことを話していたように思う。




「悠生くんが話しかけてくれた」、

「悠生くんと隣の席になれた」、


「私、悠生くんのことすっごい好き」。



恋に恋して、舞い上がっていたのかもしれない。

なのに、そんなケイにも真理は、いつも「よかったね」と言ってくれていた。


その顔に翳りがあったことを、私はどうしてあの頃、気付いてあげられなかったのか。