そして、その日の夜。


私は、森さんちの近所のドラッグストアで、食料品・ペットボトル・薬を買いこみ、インターホンを押した。


「・・・はい」


かなり、つらそうなかすれ声。


「すみません、坂本です」


「えっ・・・いま、開ける」


オートロックの入口が開いた。



玄関の前で、もう一度インターホンを鳴らすと、森さんがゆっくりドアを開けた。


「だいじょうぶ?」


「ああ、なんとか」


「おじゃまします」


森さんの顔を見ると、かなり汗だくだった。


とりあえず熱を計ると、39度近くあった。


「横になってて、いま着替え持ってくるから」


勝手に開けるね、とことわって、タオルを濡らしてポリ袋に入れ、レンチンする。


着替えのパジャマを探して、寝室にタオルと一緒に持っていって、


「これで体拭いて、着替えて。


終わった頃、また来るから」


キッチン借りるね、と伝えて、お湯を沸かして素麺をゆでる。


ネギを刻んで、卵をときほぐす。


ネギと卵が入ったにゅうめんを作り終え、寝室で着ていたパジャマとタオルを受け取り、洗濯機をまわす。


にゅうめんとペットボトルをテーブルに並べて、森さんを寝室に呼びにいった。


「森さん、少しでもいいから食べて、水分たくさんとって、薬のんで」


「ありがとう」


なに、この素直な感じ。


「べ、べつに、みんなに言われたから来ただけだし」


「うまいよ」


「お粗末さまでした」


「悪いな、せっかくの金曜なのに」


「べつに、予定ないから」



森さんは、完食してくれた。



「優花、俺さ、元カノあきらめたよ」


「あきらめたって、なんかあったの?」


「うん、はっきり振られたから。


俺にはないものが、今の彼氏にはあるんだってさ。


その男が、別れる原因になったヤツなんだ」


「そっか、それで仕事も忙しいし、ダメージもあるし、体調くずしちゃったんだね」


「情けねーよな」


「そんなことない、へこんで当たり前だよ。


付き合ってる期間も長かったんだし」


「まあな」