店員さんがさがったあと、お互いに顔を見合わせて笑って。


なんだか、ホッとした。




「優花、『とりあえずビール』って、まるでオヤジだな」


「森さんこそ、オヤジそのまんまですけど」


「やっと、いつものおまえに戻ったな」



あっ、仲直りのチャンスかも。


明日香先輩とひとみちゃんの顔がちらついた。



「あの、森さん・・・ひどいことばっかり言って、ごめんなさい。


まさか、あんなに私たちの要望を取り入れてくれるなんて思わなくて。


否定されてると思いこんで、冷たい態度とったりして・・・」


「本当はすぐにできることでも、初めからできるって言ったら、必要な変更なのかどうか、再検討したりしないだろ?


俺は、優花に成長してほしいと思って、わざと否定したんだよ」


「そうだったんですね、すみません」


「もう謝るなよ、らしくないし」


「らしくないって、どういう意味ですか!」


「そのまんまの意味だけど?


しおらしくするなんて、似合わねーよ。


優花は、いつも元気で前向きで、笑ってる方が似合う」




なんで、そんなこと言うんだろう。


そんな風に言われると、なんかドキドキする。




「そんな単純じゃないんですけど」




素直に、喜べばいいのに。


どこかで、一線を引いてしまう。