キミに出会うまで

「なに変な顔してんだよ、来週末の予行練習だろ」


「わ、わかってます!」



柄にもなく、動揺してしまった。


下の名前を呼び捨てにされるなんて、この前てっちゃんと再会するまで、2年もなかったから。



「優花も、俺のことテキトーに呼べよ。


間違っても『森さん』なんて呼ぶなよ」



「元カノは、なんて呼んでたんですか?」


「優樹って呼んでたけど」


「へー、で、元カノはいくつだったんですか?」


「俺と同い年だけど」


「大学の同級生ですか?」


「そう、同じ旅行サークル」


「同棲してたんですか?」


「そうだけど」


「何年くらい?」


「4年くらいかな」


「で、付き合ってたのは?」


「9年・・・っておまえ、からかってんだろ」


「彼女のフリするには、もっと森さんのこと知っとかないと」


「言い訳だけは一人前だな、っておまえ、『森さん』って言うのやめろ」


「そっちだって『おまえ』って言ってるじゃないですか」


「わかってるって、あと、会社以外では敬語もやめろよ」