キミに出会うまで

「だいじょうぶだろ、ニコニコ笑ってればいいんだから」


「とにかく、イヤです!」


「頼むよ、俺の両親は別に意地悪でもなんでもない、ごくごくフツーの親だし、きっと北海道みやげもたくさん持ってくるぞ」




うっ、それは少しひかれる。


いやいや、ダメダメ。



「おまえ、今ちょっと、それは欲しいかもとか考えただろ」


図星なので、何も言い返せない。



「この前介抱したこと、チャラにするからさ、おまえ以外に頼めるヤツいないんだよ」


弱味を握られている身としては、断りづらくなってきた。



「・・・ただニコニコして、お茶だせばいいんですよね?」


「そうそう、それだけでいいから、頼むわ」


「わかりましたよ、やりますよ。


その代わり、無事に代役をつとめたら、夜ごはんおごってくださいよね」




「約束するよ、優花」


「えっ、今なんて呼びました?」


「・・・優花って呼んだんだけど?」




男の人に下の名前で呼ばれるなんて、てっちゃん以来だ。


不覚にも、少しドキドキしてしまった。