なんでだろう。


まだ会ってから間もないのに、言いたいことが素直に言える気がする。


トゲのある言い方は気にくわないけど。


さりげなく優しくしてくれたりして、悪い人ではないんじゃないかと思えた。


コーヒーを飲んで、スッピンのまま駅まで送ってもらった。


偶然だけど同じ路線だったから、乗れば30分くらいで着く。



「ここからなら、横浜支店も本社も行きやすいですね」


「そ、だから気に入ってるんだ」


「一人で住むには広すぎる気がしますけど、そこは突っ込まないでおきます」


「人のプライベートに侵入すんな」



「昨日からずっと、お世話になりました。


それでは、月曜日にお待ちしてます」


「じゃあ、気をつけて」


「ありがとうございました」



改札を通過して振り向くと、森さんはまだ立っていた。


仕事じゃない時はメガネをかけないらしい。


背の高い姿が、なぜか少しさみしそうに見えた。