12月31日。


ちょうど一年前、優樹とカウントダウンイベントへ行って、想いが通じた日。


ふたりで話し合って、この日に入籍することにした。


区役所は休みだから、受付のおじさんに婚姻届を受理してもらった。


「おめでとうございます」


「ありがとうございます」


晴れて、夫婦になった私たち。



「森優花、かぁ・・・」


「なんか気になる?」


「ううん、漢字でもひらがなでも、一文字しか違わないんだなあと思って」


「そういえばそうだな」


「女子は結婚するとだいたい名字が変わるでしょ?


だから、好きな人の名字と自分の名前をくっつけて妄想したりするんだよ」


「ふーん、じゃあ『渡辺優花』ってのも妄想したんだ」


「・・・優樹のイジワル」


「やっぱしたんだ、そうなんだ、俺はしてないけどなー」


「牧野さんだって、『森まゆみ』って妄想したと思うけど」


「そんな妄想すんの、優花だけじゃねーの」


「もういい」


スタスタ先に歩きだした私の右手を、優樹はすぐにつかんだ。


「ごめん、ちょっといじめてみたくなっただけだって。


ほら、イベントの前になんか食べに行くんだろ?」


「そうだ、何がいいかな、今年最後の夕飯」


「やっぱ、年越しそばじゃん?」


区役所近くの、庶民的なお蕎麦屋さんに入ることにした。


「私、外で年越しそば食べるの初めてかも」


「俺も」


「来年の大晦日は、『去年は婚姻届を出して、おそば食べたなー』って思うのかな」


「ずっと一緒だから、毎年節目に思うだろうな」


「そうだね」