キミに出会うまで

たった1週間だけど、距離をおいていた私たち。


ケンカとは違うけど、過去を受けとめるまで時間が必要だった。


大人になって出会った私たちだから、過去のない方がおかしい。


だけど、大人だからって、妬かないわけじゃないし。


冷静になろうとすればするほど、過去にしばられて苦しんでしまう。



「私たちにとって、今回は必要な距離だったんだね」


優樹に腕枕されながら、小さい声でつぶやいた。


「そうだな、俺、もっと強くなんねーとな」


「聞こえた?」


「こんなに近くにいるのに、聞こえないわけねーだろ」


「そっか」


「もう、離れるなよ」


「うん」


「ずっと、離さないから」


「ずっと?」


「そう、ずっと」


「そんな大事なこと、こんな早く決めていいの?」


「早くないし、何度もうちで過ごして、優花とならリラックスできるってわかったから」


「私も、いい意味で気をつかってないから、すごく楽だなー」


「優花はリラックスしすぎなんだよ」


「えー、そうかな」


「ポカーンって口開けて寝てるし」


「嘘だねー、それをいうなら、優樹だって口をムニャムニャしてるし」


「ムニャムニャの方がかわいいだろ」


「寝ちゃったらコントロールできないんだから、しょーがないじゃん」



「嘘だよ、優花はかわいいよ」



不意打ちの言葉と、キス。


ずるいよ、こんなにドキドキさせるなんて。




「優花、これ」


優樹が手渡してくれたのは、小さな箱。


「ここのチョコ、好きだろ。


バレンタインのお返し」


「ありがとう、一緒に食べよう」


忘れてたけど、今日はホワイトデーだった。


「言っとくけど、義理チョコのお返しとは全然ちがうからな」