金曜日の午後。


「坂本、このデータまとめといて」


優樹がファイルを渡してきた。


「はい、わかりました」


ファイルを開くと、



『今日の夜、うちに来て』



付箋がついていた。


驚いて優樹の顔を見たけど、私と目を合わせることもなく顔色も変えずに仕事してた。



あー、いよいよ別れ話かな。


覚悟を決めないといけないのに、悲しくて手に力が入らない。


手先がしびれるくらい痛くて、仕事中なのに涙があふれそうになった。


付き合ってまだ3ヶ月くらいなのに。


もう、終わっちゃうんだ。


元はといえば、私が不倫なんかするからいけないんだ。


やっぱり、人から責められるような不倫は、しちゃいけない。



定時で仕事を終えて、残業してる優樹を含めてみんなに、


「お疲れさまです、お先に失礼します」


と言って、会社を出た。



夕飯、何を作ろう。


私が作ったものなんか、もう食べたくないかな。


何度も行ったスーパーで、カゴに何を入れたらいいのか悩んでしまう。


もうここにも、来なくなるんだな。


合鍵も返さないと。


メニューを考えないといけないのに、頭に浮かんでくるのは優樹と別れることばかり。



私はこんなに、優樹が好きなんだ。