てっちゃんは、


「じゃ、あとはよろしく」


と、仕事を終えて夕方にはサクッと帰って行った。



「なんかさ、季節外れの台風一過って感じだよね」


明日香先輩の言う通り、荒らすだけ荒らして去っていった。



優樹は何も言ってこないし。


このまま、こじれたままなのはイヤだから。


夕飯作って、優樹のマンションで待つことにした。




「ただいま」


「おかえり」



優樹はチラッとハンバーグを見て、


「うまそ」


と言いながら、私をギュッときつく抱きしめた。



「あんまり妬かせんなよ」


「ごめんね、私がコケそうになったところを支えてもらうことになっちゃって」


「・・・優花さ、アイツのこと、まだ未練ある?」


「ないよ」


「じゃあ、なんで寝たんだよ」


「えっ、それは・・・」


「雰囲気に流されると、誰とでも寝るのかよ」


「そんなことない、なんでそんなこと言うの?」


「悔しいからだろ」



優樹が、こんな風に感情を爆発させるのは、初めてだった。



「大阪で夜に、優花とビール飲んだじゃん。


あの時、もしかしたら元カレと、って思ったけど、まさか本当だったとはな」



事実だから、何も言えない。


何を言っても、事実は変わらない。



「ごめんね、今日は帰る」



優樹の顔も見ないで、部屋を出た。


優樹も、何も言わなかったし、追いかけてこなかった。



優樹を傷つけたことが悲しくて。


過去の自分が情けなくて。


泣きながら帰った道は、ふたりで歩くよりも遠く感じた。