駅に向かうときも、優樹の左手と私の右手は自然につながれて。


「別にサプライズなくても、一緒にいられればそれだけでいいのに」


「俺がしたいんだよ」


「でも、会えなかったぶん、楽しみ」


「まずは、ランチな」



優樹の家のそばにある、普通の一戸建てに見える小さなお店。


「俺も初めてなんだけど、前から来てみたくてさ」


テーブル席が5つに、カウンター席が4つ。


土曜日のお昼時だから、満席だった。


「予約しといて良かったな」


「ほんとだね」


初めて食べたサガリのステーキは柔らかくて、すごくおいしかった。


サラダにスープにごはん。


全部間食して、あとはコーヒーだけになったとき。


ろうそくが揺らめく小さなケーキが運ばれてきた。


「お誕生日おめでとうございます」


にっこり笑う店員さんに、私も自然と笑顔になった。


「ありがとうございます」


「びっくりした?」


「うん、こういうの初めてだから」


「早く消さねーと」


フーッと吐く息で炎が消える。



正直、優樹がここまでしてくれると思わなかった。


こういうの、面倒くさがる男は多いから。