「な、なんで?」


「だってさ、カウントダウンだからって一人で出かけると心配かけるだろ?


俺が一緒にいるってわかれば、安心だろ」


「そ、そういうもんですかね・・・」


「ま、挨拶するかどうかは優花に任せるけど、迎えに行くから」



彼氏のフリ、って。


なんか、大事になってる気がする。



そこからは普通の話になって。


実家の最寄り駅を出たら、住宅街だからシンと静まり返っている。


ふたりの足音だけが響く。



「優花」


「はい」


「俺、優花のこと好きでいていいよな?」




クリスマスに同じことを聞かれた。


素直な気持ちを伝えられなくて、反省したばかりだったから。


私は、正直な気持ちを伝えることにした。




「うん、いいよ」


私も好きだから、好きでいていいよ。




ちょうど家の門に着いて。


「送ってくれてありがとう」


「じゃあ、31日に」


「よいお年を」


「ああ、俺といい年にしような」


ニヤリと笑って、森さんは駅へ戻っていった。



森さんの言葉ひとつひとつが、体の芯をあたためてくれて。


やっぱり、私は森さんが好きなんだって、実感した。


お互い、まだ彼氏彼女のフリだけど。


いつか、恋人同士になれるといいな。



固く閉ざしていた私の心をとかしたのは、森さんのまっすぐな言葉の数々。


もう一度だけ、信じてみよう。