クールな女上司の秘密

 美樹本さんが帰った後も、場は重い空気に包まれていた。


「真奈美。このタイミングで言おうか?」

「うん、いいんじゃない」

「よし」


 俺はすくっと立ち上がった。


「あの、みなさんにお知らせしたい事があります。では齋藤チーフ、お願いします」

「え? 私?」


 真奈美は俺を見上げ、驚いて抗議めいた事を言ったが、俺は無視して腰を降ろした。


「なんで私なのよ?」

「チーフだから」

「関係ないでしょ?」

「関係あるさ。これからの業務に影響あるだろ?」

「そんなの、あなたが言えばいいじゃない」

「バカだなあ。チーフのおまえが言わなきゃダメだろ?」

「何言ってんのよ。こういうのは男が言うものでしょ?」

「ダーメ。真奈美が言って」

「やだ。知君が言って」

「真奈美だ!」

「知君よ!」


 と、その時……


「あの、お二人さん。どっちでもいいんじゃないですか? みんながびっくりしてますよ? 私はとっくに気付いてましたが」


 向かいの鈴木さんから言われてしまった。そして周りを見ると……みんながギョッとした顔で、俺と真奈美の方を見ていた。