クールな女上司の秘密

「ご苦労様です」

「どうも」


 年上の鈴木さんから敬語を使われるのは気が引けるのだが、親会社と子会社みたいな関係なので仕方がない。受付を済ませると、俺達はこの会社のシステム部へ向かって行った。


「佐伯さん。さっきの子は知り合いですか?」


 歩き出してすぐに、鈴木さんからそう聞かれた。


「いえ、知り合いというほどでは……」

「何を話してたんですか?」

「え? それがですね、“お昼とかはどこで食べるんですか?”なんて、変な事を聞かれたんですよ……」

「ほお。逆ナンですか。さすがですね」

「逆ナン? ち、違いますよ。なんでそうなるんですか?」

「だって、昼飯に誘われたんでしょ?」

「えーっ、そうなんですか?」

 知らなかった。だったら、“お昼一緒に食べませんか?”とか言えばいいものを……

「これだよ。相変わらず佐伯さんは鈍感だよなあ。天然ですか?」

「う……」

「しかし羨ましいですね。女性にモテモテで」

「な、何を言ってるんですか。僕なんかもてませんよ」

「またまたあ。無自覚ですか。そこがまたいいんだろうなあ……」

「鈴木さん、言ってる意味が……」


 なんて会話をしている内にシステム部へ着いてしまった。ちなみにチーフは終始無言。俺と鈴木さんのくだらない会話になんか、全く興味がないのだろう。