仕立ての良さそうなスーツに、高そうなネクタイとコート。いつもの事だが美樹本さんは決まっている。更に悔しい事に、真奈美とのツーショットがさまになっている。ちぇっ!

 それにしても、美樹本さんはよく来れたものだと思う。しかも堂々として、少しも悪びれた様子はない。


「来てくださったんですね。席はそちらでお願いします」

「うむ」


 美樹本さんには対面の端っこの空いていた席に座ってもらい、真奈美には俺の隣の席を素早く指さし、真奈美はニコッと微笑み頷いた。

 奇しくも、俺の列はシステム部の4人が並び、対面はゲスト的な3人が並ぶ形になった。


「なんで美樹本さんと一緒なんだよ?」


 真奈美が隣に座るやいなや、俺はそう問い詰めた。もちろん小声で。


「入口でバッタリ会ったのよ」

「本当かなあ……」

「本当に決まってるでしょ? 何が言いたいわけ?」

「別に何って事はないけどさ……」

「どうでもいいけど、みんな待ってるんじゃない?」

「え?」


 見れば5人の冷ややかな目が、俺に向けてジトーッと注がれていた。


「揃いましたので、忘年会、兼佐藤さんの送別会を始めたいと思います。佐藤さんには後ほどご挨拶を頂戴しますが、堅苦しい挨拶は抜きにして早速乾杯します。よろしいですか? かんぱーい!」


パチパチパチ……


「幹事、ご苦労さま」

「おお」


 俺と真奈美は互いに見つめ合い、カチンとグラスを合わせるのだった。