「そんなに驚く事? 32にもなってバージンって、ありえない?」


 チーフは、目に涙をいっぱい溜めて言った。


「違う。違いますよ。そうじゃない。でも、俺達はしたんでしょ?」

「え?」

「この間の夜、俺のアパートでしたって、チーフ……じゃなかった真奈美さんは、言ったじゃないですか?」

「言ったけど、したのはキスだけだもん」

「キスだけって……」

「キスだって、私はあの時が初めてで……おかしい? 笑っちゃう?」

「真奈美さん、いや、真奈美。おまえ最高!」


 俺は真奈美の頭をクシャクシャっとやり、彼女の頭を胸に抱えた。


「知君……?」

「まさか真奈美の初めてをもらえるなんて、思ってなかった。俺、真奈美の事を一生大事にする。一生離さない。いいかな?」

「もちろんよ、知君。離さないで?」



 こうして、俺と真奈美は名実ともにひとつになった。佐伯君から知君に、チーフから真奈美に変わった瞬間でもある。

 かなり絡まってはいたが、俺と真奈美は運命の赤い糸で結ばれていたのだと思う。



※本編はこれで終わりますが、後日談を追加しました。
よろしかったらお付き合いをお願いいたします。

2015.10.25 秋風月