クールな女上司の秘密

「ああ、サッパリしたわ……」


 チーフが戻って来た。例によって洗い髪が艶かしいチーフが。さすがに昼間からよこしまな欲求は起きないが……いや、そうでもないが、今はそれどころではない。


「チーフ、ごめんなさい」

「え? 何が?」

「僕、やっぱり料理、出来ません」

「なんだ、そんな事? いいわよ、私がするから」

「それはダメです。チーフは安静にしてないと。考えたんですけど、何か頼みませんか? 例えば、ピザとか……」

「ピザ? うん、たまにはいいわね」


 という事で、チーフにピザの宅配を頼んでもらった。


「ところでチーフ」

「ん?」

「どうして二日も食べなかったんですか? そんなに体の具合が悪かったんですか?」

「えっと、それは……」


 俺の問いにチーフは口ごもった。もし本当に食べられないほど具合が悪かったのなら、相当な重症だと思う。だが、見た限りそこまで重症とは思えず、であれば他の理由があった事になるが、実は俺にはある仮説があった。


「もしかして、チーフ……」

「な、何よ?」

「ダイエットのし過ぎ、もしくは失敗ですか?」


 そう。チーフの体型は俺から見れば素晴らしく、ダイエットの必要なんてまるで感じないが、女性はやたらと気にするものらしい。そして、中には副作用として拒食症になるような誤ったダイエット法があるとかないとか、何かで見た覚えがあるんだ。


「そんなわけないでしょ?」

「違うんですか?」

「違うに決まってるじゃない。何がダイエットよ。ご飯も食べられないほど悩む事があるって、あなた知らないの?」

「え? チーフには悩みがあるんですか? どんなですか?」

「知らない!」

「そう言わずに……」


 と、その時、どこかからスマホの着信音みたいな音が聞こえてきた。