クールな女上司の秘密

次の日、チーフは美樹本さんと密会したのかしてないのか、ものすごく知りたいのに知るすべもなく、俺はイライラのしどうしだった。ちなみに、昨夜は家呑みをした事はしたが、早々にふて寝してしまった。


 社員食堂で昼飯を済ませ、のんびりと職場に戻ろうとしたら、職場の入口で3人ほどの女子がたむろしていた。後ろからだから定かではないが、いずれも見覚えのない女子達だと思う。

 何をやってるんだろうと思いながら女子達に近付くと、彼女達のひそひそ話が耳に入ってきた。


「へえー、あの人なんだあ」

「涼しい顔しちゃって、自分が噂になってるの知らないのかな」

「知らないんじゃない? 知ってたら、恥ずかしくて会社になんていられないでしょ?」

「だよね。それにしても、美樹本さんって趣味悪いと思わない?」


 なんだって? 今、確かに“美樹本さん”って言ったよな?


「そうそう、あたしもそう思った。どうせ不倫するなら、もっと……ねえ?」

「“あたしと……”って、言いたいんでしょ?」

「やだあ、わかったあ?」


 “不倫”!?

 今、不倫って言ったよな。しまった……!


 俺はその女どもを蹴散らすようにして、職場の中に入った。その時、女どもから非難めいた事を言われたようだが、そんなものは無視だ。

 そして席に座っているチーフを真っ先に見ると、チーフも俺に気付き、一瞬目が合ったのだが、その目が虚ろに見え、もしやと思ったら、案の定チーフは、崩れ落ちるように床に倒れ込んでしまった。