クールな女上司の秘密

 手持ちぶさたなのでテレビをつけたら、時々観るクイズ番組をやっていて、ついそれに没頭してしまった。俺、クイズ番組は結構好きなんだ。

 一人で答えを言い、当たると喜び、外れると嘆き、ここが人の家だという事も忘れて騒いでいたら、頭の上から「楽しそうね」と言う声が聞こえた。見上げれば、いつもとは様子が違うチーフが立っていた。


「シャワー浴びちゃった。汗で気持ち悪かったから」


 言葉が出なかった。チーフに見惚れてしまって。

 黒髪がしっとりと濡れ、たぶんすっぴんのチーフは、それでも十分に美しく、可愛かった。Tシャツにスウェットを履いたチーフの姿を見るのはもちろん初めてで、なんだか新鮮な気がした。


「あ、そうだ。コーヒーを淹れなくちゃね。ちょっと待ってて?」


 そう言ってチーフは俺に背を向け、すかさず俺はすくっと立ち上がった。ダメだ。もう我慢できない……


「チーフ!」

「きゃっ」


 俺はチーフを後ろから抱きしめた。


「コーヒーはいいです」

「そ、そうなの? じゃあ何か食べる? お腹すいたでしょ?」

「それもいいです。俺は……チーフを食べたいです」


 俺はチーフをくるっと回し、こっちを向かせた。


「佐伯君……?」


 綺麗に澄んだ目を見開き、顔を紅く染めたチーフ。こんなチーフを目の前にして、我慢できる男がいるなら拝みたいものだ。


「ダメですか?」

「…………」


 チーフの無言はオッケーの意味と俺は解釈し、チーフの形のよい唇に、俺のそれをゆっくりと重ねていった。