クールな女上司の秘密

「チーフ、どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

「ごめん……なさい。めまいが……」


 チーフは途切れ途切れながら、目眩がすると言った。よくわからないが、貧血というものだろうか。

 とにかくチーフをどこかに寝かさねばと思い、チーフの膝の裏に手を当てて抱き上げた。いわゆる“お姫様抱っこ”だ。

 あるいはチーフは嫌がるかもと思ったが、それどころではないようで、俺の腕の中でグッタリしていた。そんなチーフを抱き上げたまま、俺はベッドを探した。この部屋にベッドかあれば、だが。

 もしチーフが布団を床に敷いて寝る人なら、いったんチーフをどこかに降ろし、布団を敷く事になるが、正直それはちょっと厄介だな。

 そんな事を思いつつ、閉じられたドアがあったので、両手が塞がっていて少し苦労しながらもそれを開けると、目指すベッドがあった。その部屋は、本来は俺がたやすく入ってはいけない、チーフの寝室なのだと思う。

 だが今は、もちろん躊躇している場合ではなく、ためらわずにその部屋に入ると、チーフをベッドにそっと降ろして……と思ったら、掛け布団がきっちり伸ばされていて困った。そのままでは、チーフを掛け布団の上に降ろしてしまう事になるのだ。

 そこで俺は肘や足を駆使し、チーフを抱いたまま掛け布団をめくり、なんとかチーフを寝かせる事が出来た。

 ふう、と一息つきながら、チーフの体に掛け布団を掛けたら、「暑くてイヤ!」と言ってチーフは布団を手で払ってしまった。ふと見れば、チーフの額には玉のような汗が噴き出ていた。