クールな女上司の秘密

 フローリングの床にふわふわのクッションを敷かせてもらい、その上で俺は胡座をかいた。


「座りにくくてごめんね。ソファを置くと部屋が狭く……あ、ごめんなさい」


 チーフが途中まで言って謝ったのは、俺の部屋にはソファが置いてある事を思い出したからだと思う。確かにソファは場所を取るが、俺は楽さを採り、チーフは広さを採ったという事だな。


「そんな事、気にしなくていいですよ」

「本当にごめんなさい。コーヒーでいいかしら?」

「はい、すみません」


 チーフは上着を脱ぐと、たぶんキッチンがあると思われる方へ行った。

 ふと見れば、ローテーブルの上にテレビのリモコンが置いてあった。それを使って勝手にテレビをつけてもいいだろうか。いいよな。

 なんて事を考えていたら、チーフが行った方向から、ガタンと大きな音がした。

 なんだ、今の音は!?

 俺は考えるより先に立ち上がると、急いでそちらへ行った。すると……キッチンのシンクの辺りに手をついて項垂れ、今にも倒れてしまいそうなチーフの姿があった。


「チーフ!」


 俺はチーフに駆け寄り、彼女の肩をしっかりと抱いて顔を覗き込んだ。すると、チーフは蒼い顔をして目を閉じており、まるで走った後のように呼吸が荒かった。

 床には、音のもとと思われる、白い電気ケトルが転がっていた。