クールな女上司の秘密

 早速、駅でチーフと落ち合い、一緒にチーフのアパートまで行った。

 今日は金曜だから、二日間チーフに会えないんだな。そう思ったらチーフと離れるのが名残惜しくなったが、辛抱するほかないわけで……


「チーフ。お疲れ……」

「佐伯君」


 いつものように“お疲れさまでした”と言おうとしたら、それに被せるようにチーフは俺の名を呼んだ。


「はい?」

「あの、よかったらお茶でも飲んで行かない?」

「えっ?」

「だって、ほら。今夜は結構寒いから……」

「あ、そうですね。お言葉に甘えちゃおうかな」


 やった! ついにチーフからお誘いされたぜ!

 チーフの気が変わったら大変だから、俺は「行きましょう、行きましょう」とか言いながら、チーフの背中を押してアパートの階段を上がって行った。そしてチーフがドアを開けると、「お邪魔しまーす」と言って、素早く中へ入って行った。


「どうしたの? 佐伯君、おかしい」

「だって、チーフの気が変わったら困りますからね」

「そうなの? そうね、やっぱりダメかなあ」

「もう遅いです」


 俺はそう言って、後ろ手でガチャッとドアをロックした。


「もう、佐伯君ったら…… 散らかってるから恥ずかしいのよね」


 とチーフは言ったが、全然そんな事はない。外装の綺麗さに違わず、チーフの部屋はよく整頓され綺麗だ。しかもそこはかとなく、女性の部屋らしいなと思った。

 言うまでもないが、俺は胸がドキドキし、ワクワクした。ずっとここに入りたいと思っていたのだから、当然ではあるのだが。