チーフに予告した通り、次の日以降も俺は彼女を家まで送り、かれこれ10日ほどが過ぎた。その間、もちろんチーフは美樹本さんと会っていないし、そんな素振りもなかった。
「佐伯ちゃん、このところどうしたのよ?」
席で仕事をしていると、隣の佐藤さんが俺に話しかけてきた。チーフは打ち合わせで席を外している。
「何の事ですか?」
「君とチーフの事に決まってるでしょ? 毎晩一緒に帰って、何やってるの?」
「文字通り、一緒に帰ってるだけです」
「嘘ばっかり! そんなわけないじゃん」
「いや、それが本当なんですよね」
そうなのだ。いつかチーフは俺を部屋に入れてくれるんじゃないかと、甘い期待を抱きつつも、毎晩チーフのアパートの前まででさよならしている。
「誰もそんな事信じるわけないでしょ? 社内中の噂になってるって事、あんた知ってるの?」
“君”からいきなり“あんた”に変わったが、そこはスルーでいいや。
「社内中だなんて、大げさな……」
うちはそこそこの会社で、ここで働く人の数は、パートナーさんも含めると軽く2千人は超えるはずだ。社内中だなんて、有り得ないと思う。
「何言ってんのよ。特に若い女の子の間じゃ、その話で持ちきりよ」
「またまた……」
「女子だけじゃないぜ」
向かいの席の高橋さんが俺達の会話に加わった。高橋さんは、俺より7つか8つ上の先輩だ。
「佐伯ちゃん、このところどうしたのよ?」
席で仕事をしていると、隣の佐藤さんが俺に話しかけてきた。チーフは打ち合わせで席を外している。
「何の事ですか?」
「君とチーフの事に決まってるでしょ? 毎晩一緒に帰って、何やってるの?」
「文字通り、一緒に帰ってるだけです」
「嘘ばっかり! そんなわけないじゃん」
「いや、それが本当なんですよね」
そうなのだ。いつかチーフは俺を部屋に入れてくれるんじゃないかと、甘い期待を抱きつつも、毎晩チーフのアパートの前まででさよならしている。
「誰もそんな事信じるわけないでしょ? 社内中の噂になってるって事、あんた知ってるの?」
“君”からいきなり“あんた”に変わったが、そこはスルーでいいや。
「社内中だなんて、大げさな……」
うちはそこそこの会社で、ここで働く人の数は、パートナーさんも含めると軽く2千人は超えるはずだ。社内中だなんて、有り得ないと思う。
「何言ってんのよ。特に若い女の子の間じゃ、その話で持ちきりよ」
「またまた……」
「女子だけじゃないぜ」
向かいの席の高橋さんが俺達の会話に加わった。高橋さんは、俺より7つか8つ上の先輩だ。



