早速その夜から実行する事にし、定時まではいつになく仕事に励んだ。チーフに合わせ、いつでも帰れるようにするためだ。

 そして定時を1時間ほど過ぎた頃、斜め前のチーフが帰り支度を始めたと見て、俺も大急ぎで支度を始めた。チーフにしては早めの上がりだと思うが、体調が優れないからだろうか……


 チーフが立ち上がり、誰にともなく小さな声をかけて席を離れると、すぐに俺も鞄と上着を持って立ち、佐藤さん達に「お先に失礼します!」と言い、チーフの後を追うように職場を離れた。実際のところ、チーフの後を追うわけだが。

 チーフにはエレベーターホールで追い付いた。もしチーフがトイレに寄ったら困るなとか、細かい事を心配したが大丈夫だった。

 下りのエレベーターに乗り込み、俺はチーフに軽く会釈したが無視されてしまった。と言っても、それぐらいの事じゃへこたれない。最近は慣れてるし。

 チーフは社を出ると真っ直ぐ地下鉄の駅に向かい、俺はピタッとチーフの横を歩いた。当然ながら、チーフの歩く速度に俺が合わせる形になる。

 しばらく歩き、不意にチーフが立ち止まった。


「佐伯君、何のまねなの?」


 少し見上げるようにして俺を見るチーフの顔は、不快指数100パーセントといった様子だった。