俺は二日酔いの体に鞭を打ち、むしろ普段より早めに家を出た。齋藤チーフはいつも出社が誰よりも早いため、俺も早めに行けば、みんなが来る前にチーフと話が出来ると思ったのだ。もちろん、昨夜の事を……

 ところが、今日に限ってチーフは出社していなかった。さすがのチーフも、今朝は二日酔いで起きれないのだろうか。

 結局、チーフが出社したのは始業時刻ぎりぎりだった。もちろん、昨夜の事を彼女と話すのは後にしなければいけないが、それは全く問題ない事に気付いた。というのは、今日はチーフと二人で外出する予定になっているのを思い出したからだ。従って時間は十分にある。


 ちなみに俺の会社は大手OAメーカー系列のソフトウェア開発会社で、俺はSEをしている。と言っても入社してまだ5年で、チーフや他の先輩に比べればまだまだ未熟。言ってみればSEの見習いみたいなものだ。

 所属は第○情報ソリューション部の第○システム部。部の中の部みたいになっているが、システム部というのはいくつもあって、実態としては少人数のチームだ。部長は不在で、チームのリーダーは“チーフ”と呼ばれ、それが齋藤チーフだ。ちなみに俺はもちろん平(ひら)だ。