「待って!」


気づけば私は郁斗の腕を掴んでいた。


「ワケありカップルなら…別に…いいよ」


恥ずかしくて目を見られない。


郁斗は今、どんな顔をしているんだろう…。


顔を上げたその瞬間、私の目の前が郁斗の制服で埋め尽くされた。


つまり、抱きしめられている状況。


「ありがとな。俺のために…」


「別に…郁斗のためじゃないし…。私のためだから」


嘘つきの照れ隠し。


『天邪鬼』


そんな言葉が私には似合うかもしれない。


「菜々らしいな。ありがとう」


「…その代わり、明日からしっかり守りなさいよね?」


「ああ、もちろん」