「お母様〜!」


「湊、準備できたの?」


「うん!お婆様がこれ持って行きなさいって!」


そう言って差し出されたのは、お婆様得意の手作りアップルパイ。


相変わらずいい匂いがして食欲をそそる。


「沙優ちゃんと食べてもいいでしょ?」


「うん、いいよ。3人でお出かけ久しぶりだね〜」


「うん!」


私と郁斗は高校卒業と同時に結婚して、子供を産んだ。


お爺様は少し反対だったけど、お婆様が押し切って認めてくれたってところ。


お婆様は、私のお母さん達の駆け落ちのことがあってか、何かと私と郁斗を気にかけてくれる。


大学に行って、普通の夫婦として生活してもいいとも言ってくれた。


でも、私だって甘えてばかりはいられない。


財閥の娘としての責任と運命から逃げるつもりもない。


私の気持ちを話したら、郁斗も同意してくれた。


だから、私達は財閥の家系の人間として生きることにした。


高校を卒業して、私達は勉強にレッスンの毎日。


私は産後、復帰するまで少しかかったけど、いろんな人が助けてくれて今は充実している。