ゆっくりと、上品に、笑顔を振りまきながらお爺様や愛甲君のいる場所へ足を運ぶ。


指定の場所に行くと、お爺様にお姉ちゃん達、愛甲君と愛甲君の家族の人達もいた。


お爺様から手招きをされ、愛甲君の隣に並べられる。


目の前いっぱいに広がる取材の人達。


光を浴び過ぎて、かなり暑い。


冬とは思えない。


「えー、皆様お待たせしました。これより我が綾瀬財閥の三女、綾瀬 菜々保と愛甲財閥の長男、愛甲 琢磨の婚約記者会見を……」


「ちょっと待ったーーー!」


「…え?」


遠くから聞こえた声に、その場の全員が耳を疑った。


こんな大事な記者会見で乱入者⁉︎


警備の人だっていたはずなのにどうやって…。


いやいや、それよりも!


「誰じゃ!」


それね!


ドアの方からやってくる人物。


それは……。


「う、うそ…」


紛れも無い、郁斗本人だった。