約束の場所まであと少し。


「はぁ…はぁ…はぁ…っ…郁斗!」


私よりも先について寒そうに待っていた郁斗に声をかける。


「菜々!…相当疲れてんな」


楽しそうに笑いながら私に部活のジャージを掛けてくれる。


「ごめ…遅くなっちゃって」


「いいよ、俺も今部活終わってきたとこ」


「…クスッ…ありがと」


そんなわけないことくらいわかってる。


でも、そんな優しさが胸にしみる。


冷たくなった体を温めてくれるみたいに。