「菜々〜、いるんだろ〜?」


どこからか聞こえる声で目が覚めた。


ぼーっとしていた意識がだんだん戻ってくる感覚。


「ん…あ、私寝ちゃったんだ。…それより、誰かに呼ばれたような…」


「菜々〜!そこにいるだろ〜!」


「は⁉︎」


私を呼ぶ声がしたのは窓の向こうから。


つまり外。


しかも、呼んでいるのは郁斗。


「あいつは恥ずかしいっていう感情がないのか…」


郁斗がいるのは玄関の目の前。


さすがに2階から大声を出して、返事をするのは恥ずかしい。


ここは住宅街だしね。


私は迷ったあげく、郁斗には悪いけど無視することにした。


しばらく声はしていたけど、結局諦めたみたい。


なんの音もしなくなった。