「菜々〜」


窓の外を見つめていた私のところに誰かが近づいてきた。


顔を見なくても誰だかわかる。


私のことを菜々って呼ぶのは1人だけ。


まぁ、このクラスで私に話しかけてくる人なんて、この人くらいしかいないけど。


「郁斗…」


目をやると、満面の笑みをした郁斗がいた。


郁斗は私の幼なじみ。


小さい時からご近所さんで、よく遊んでいたの。


今は…昔ほど仲良くないけど。


「もうすぐテストだろ?勉強教えてくれ〜!」


「私今回あまり勉強してないから無理だよ。それに勉強なら郁斗の方ができるじゃない」


郁斗はいつも50位以内に入ってる。


私が勉強を教える必要なんてない。


むしろ、郁斗はいつもみんなに教えてるくらいなんだから。


「俺、今回の範囲が苦手分野なんだよな〜。菜々は得意分野だろ?」


なんで郁斗がこんな情報を持っているんだか…。


「…古典と物理だけね」


「でも、生物はいっつも俺より点数いいし…1個くらい教えてくれよ〜」


「そんな時間ないから」


「またかよ〜」