鈴木くんと彼女の不思議な関係


「由里ちゃんがさぁ、目立ちたくないような事言ってたわりには、結局、すげー真剣じゃんか。俺達も本気でやらないと、浮いちまうぞ。あいつ。」
 驚いた。布施がマトモな事を言っている。ってか、こいつも案外、真面目でいいヤツだったじゃないか。今ごろ気付くなんて。

「わかってる。頑張るよ。」
 2年間同じ部に所属していながら、こいつとこんな風に目で頷き合ったのは、初めてだったかも知れない。裏方と役者には、こんなにも距離があったのか。


「やだ!そんな真っ赤なの。だめよ!」
突然、ヒステリックな声が響いた。

何が? 意味が分からず緩慢に彼女に視線を向けると、清水がメイクボックスを片手に、俺の方に突進して来る。