川村は多恵には手を出さない。彼女が真面目な上に晩生で、行きずりの関係などでは終わらない女だということが分かっているからだ。だが、あるいは多恵ならば、川村を救ってやれるのではないかとも思う。川村が距離を保ちながらも、本当は多恵を誰より大切に扱っている事を、俺は知っている。そしてまた川村ならば、頑に女になる事を拒んでいる多恵の鎧を、優しく脱がす事が出来るかもしれない。

 可愛い2人の後輩が上手く行くとしたら、俺の想いを閉じこめる甲斐もあるかもしれない。仲良く作業する2人なら飽きる程見てきた。いまさら胸がざわついたりはしない。
 目の奥で川村の隣に多恵を並べて、多恵の腕を川村の腕に絡み付かせてみる。やっぱりダメだ。今はまだ、想像するだけで結構辛い。