「確かめなくて良いんですか?彼女の気持ち。」

 大きなため息が出た。仕方ないか。こいつは何も気付いてないんだから。無神経すぎる発言は俺に多恵を思い出させた。そうか。こいつら似てるんだ。

「お前が言うのかよ。。。」
思わず言うと、神井は慌てて謝ろうとする。
「スミマセン。何も知らないのに勝手な事言って。」
「確かめなくても分かってるんだよ。なにせお父さんだからな。」

 イライラして思わず大きな声が出てしまったら、神井は驚いて困った顔をした。完全な八つ当たりだ。格好悪ぃなぁ。居心地の悪い沈黙が流れる。俺は深呼吸をして気分を変えた。

「そうだな。また、受験が終わったら、その時考えるよ。それまであいつがフリーだったらの話だけど。」
 ちょっと意地悪を付け加えてやったら、神井が一瞬ギクリとしたのがわかった。俺が引退したからって、お前が多恵をモノにできるとは限らないぞ。川村だって他の男だっていくらでもいる。今は男に興味のない多恵だって、いつどんなきっかけで蝶になるかは誰にも分からないんだ。