「先輩、行ってくるんで。待っててください」 「うん。気をつけてね」 引き止めない先輩。 今に思えば、先輩が引き止めなくてよかったと思う。 あの電車の中でも。 引き止めていれば、あたしは悩む一方だったから。 家を出て、しゅうの家まで駆け出した―――。 「…貴方、かすみのこと好きなの?」 「えぇ。とても。俺も浮気していたんですよ」 「かすみは浮気される人に囲まれてるわね…」 「でも俺は女関係を、全部クリアにしたら、ちゃんと付き合います。 かすみさんを他には渡したくないんで―」