先輩が自販機で飲み物を買って、ベンチに腰掛けた。 あたしも隣に座る。 「オレンジでよかった?」 「あ。ありがとうございます」 「…初めてだったんだ」 「えっ?」 先輩がぽつりと話し出した。 「かすみちゃんみたいな子。初めてだったんだよ」 悲しげな表情は、先輩には似合わなかった。 あたしは何て言えばいいのか分からず、先輩の言葉を待った。 「……俺の嘘を見破ったのは、かすみちゃんだけだった」 あの笑顔が嘘だと分かると、少しだけ安堵のため息が零れる。